茶師について

「茶師」とは何をする人でしょうか?

茶師の主な仕事は茶葉の選定と合組(ごうぐみ=ブレンド、調合のこと)です。新茶の時期になると、たくさんの畑のそれぞれに特徴を持つ茶葉を、多いときには日に1000種類も審査して、その中から選び抜いた茶葉を仕入れて合組します。

目には見えない「おいしさ」を求めて


「おいしさ」の感じ方は人それぞれですが、日本人に共通の快・不快の感覚というものがあります。苦み・渋み・甘み・旨みのバランスが良く、ほどよいコクがあり、のど越しが良く、クリアーで爽快感があること、そして香りも含め全てのバランスがとれて初めて「おいしい」と感じます。 逆に、えぐみや強すぎる渋みは不快に感じるものです。

茶師は、その「おいしい」という目に見えない感覚を五感と経験で覚えていて、頭の中で鮮明にイメージすることができます。

ひとつの畑のお茶の個性をいかしてそのまま商品にする場合もありますが、組み合わせてブレンドするために選ぶ場合は、まず最初にたどり着きたい味をイメージしておいて、それぞれの茶葉の持ち味はもちろん、どの茶葉と組み合わせたときにどのような持ち味を発揮できるかということも頭の中でシュミレーションしながら、そのイメージに添わせるように茶葉を選定していきます。

茶葉の持ち味を引き出すブレンドの妙

旨みのある茶葉、上品な苦味のある茶葉、香りの良い茶葉・・・それぞれの茶葉が持つ個性を見極めて、適切な比率でブレンドすることにより、もともとそれぞれの茶葉が持っていた以上の良さを引き出すのが茶師の腕の見せどころです。

甘いスイカにからい塩を少しかけると甘みが強く感じられるように、味というものは単純に1+1=2とは限りません。

組み合せを間違うとせっかくの長所を打ち消し合い、かえってマイナスになることもありますし、逆に単独では光らなかった長所がブレンドによって輝きだすこともあるのです。

たとえると茶師はオーケストラの指揮者のようなもので、響きの違う楽器の奏でる音をバランスよく組み合わせることで、ひとつの楽器だけでは出せない厚みのある音色を引き出すことができるのです。

時には、ひとつの楽器にソロで美しい演奏をしてもらうこともありますが、オーケストラでないと出せない魅力もあります。もちろん優秀な演奏者を選ぶことが大切ですが、ソロでは優秀でも他とのバランスが悪いとせっかくの良さが活かされませんし、ソロでは弱いけれどオーケストラでこそ魅力が輝く人もいるのです。

かわらないおいしさのために

茶葉は自然の恵みですので、同じ品種であっても土の質や地形、育て方などによって風味が変わりますし、同じ畑で同じ人が同じように育てても、気候によって毎年風味が違います。

ですから、変わらない美味しさをお届けするためには、毎年同じように仕入れをしたら良いというものではありません。その年ごとに、どの畑からどのお茶をどのくらい仕入れるか気の遠くなるような数の茶葉を審査して選定し、ブレンドしているのです。

長い間お客様にご愛飲いただいている定番商品ですと、少しでも風味を変えると「味が変わった」とお叱りをいただくこともあります。そこまで思い入れてくださっている方がいらっしゃることはほんとうに有難く、それだけに手を抜くことは許されません。

宇治香園では、代々継承された技術を持つ専属の茶師がすべてのお茶の味を決めていますので、いつも変わらない美味しさをお届けすることができるのです。