気分はCha-Cha-Cha!

お茶のように すうっと心にしみて 明るい気分になるエッセイ

第2回 「おつかれさま」と香る湯気

ひと口サイズの甘いお菓子、決まった時間に流れる落ち着きあるラジオの声、食後のお茶……。仕事を終えた私を待っている、リラックスモードに切り替えてくれるもの。子育て前の私なら、「つかれた〜!」と家に着くなりキッチンに向かい、勢いよく缶ビールを開けていたかもしれない。

けれど、人間とは不思議なもので、歳を重ねて環境や生活習慣が変わると、選び取るものも次第に変わってくるものなんですね。今は、夕食後に、ほっとひと息つきながらお茶をいただくのがちょうどいい。子どもをお風呂に入れて寝かしつけなくてはいけない、次の日もあるし、なんていう緊張を伴った気持ちもややあって、あたたかい飲み物が自分のモードを切り替えるスイッチのひとつになっています。

そういうわけで、夜にお茶を選ぶことが増えました。「お茶を淹れる」と言うと、茶葉の量やお湯の温度を正確に計らなくては……と思う方もいるかもしれません。もちろん、茶葉の良さが最も生きる淹れ方はあり、繊細なおいしさを味わうなら丁寧に淹れたいですよね。けれど、毎日飲むのには、沸騰させたお湯をあまり時間を置かずにざぁーっと注いで数分でできあがる、気軽なものが我が家の一軍です。しかもたっぷり飲みたい私は、宇治香園さんのお茶なら、ほうじ茶や紅茶。やさしい香りと味わいに心も体もほぐれていきます。

よりリラックスしたいときには、飲みながら目を閉じて、心と体に沁み渡っていく感覚に意識を向けてみることも。ゆるんでいく自分を、丁寧に観察するように。じわぁっと体温が上昇して、呼吸が深くなり、力が抜けていく体の変化に注目すること2〜3分。外部に渦巻く情報から一旦離れることができ、そこに「自分のための時間」が生まれて、心も体も静まります。とはいえ、ひと息ついたそばから、息子に「ママぁ!見てー!」と呼ばれることのほうが多いのですが!

お茶とともにある豊かな時間は、自分自身が「おいしい」と感じる茶葉を選ぶことも大事。「気に入っているお茶が家にある」というだけで、ワクワクするものです。「なんでもいい」ではなく「これがいい」と主体的に選ぶことは、自分を大切にすることとイコールです。体も喜んでいる気がしませんか?

ところで、モードを切り替える「自分のための時間」、みなさんはどうやって確保していますか? 入浴時、就寝前、仕事後の1時間など? 私はここ最近、食後のあたたかいお茶を飲む以外では、家族がまだ寝ている早朝の30分が、一人静かに過ごす大切なひとときです。

一時期、夜明けを知らせるカラスの声とともに目が覚めることが続き、非常に困っていたのですが、どうせならこの時間を有効に!と朝型にシフト。学びに充てたり、ヨーガの呼吸法を実践したりと、1日が始まる早朝に自分のペースを整えることにしたのです。「時間がない」といろいろ諦めかけていた子育て初期と比べて、心に余裕が生まれてきた気がします。災い転じて福となす。悩まされていたはずが、カラスに感謝です(笑)。

スピード感が求められ、時間に追われる時代。日々溢れる情報を前にして、気を張って過ごしているという方は少なくないと思います。脳が休まらずにいれば、体も心も疲弊してしまいますよね。僅かでも、意識して自分のペースを取り戻す時間を作りたいものです。

1日のがんばりを労わってくれるような、お茶の香りをまとった湯気が、今夜も私のカップから立ち上っています。芳醇な香りのお茶だからこそ、です。

ぜひ、あなたの傍らにも「おつかれさま」の湯気を。もくもく、もく。

ではまた次回。

菅井やすこ
1981年生まれ。衣食住、子育てなどのさまざまなジャンルの雑誌・WEB・イベントに編集者として15年以上携わる。その後、子育て層の心のケアに注力すべく、2022年に独立。2023年には大学に編入学し、心理学の研鑽の道へ。以降、芸術療法のひとつである表現アートセラピーや、ヨーガの伝統的呼吸法も習得しながら、内面を見つめる心身のケアを追求している。趣味はお菓子作り。一児の母。





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